
D.A.N./『Sonatine』通常盤(CD)
●tracklist
1. Start
2. Chance
3. Sundance
4. Cyberphunk
5. Debris
6. Pendulum
7. Replica
8. Borderland
9. Orange
Release: 2018.7.18(wed)
Price: ¥2,300(+tax)
No: SSWB-008
Label: SSWB / BAYON PRODUCTION
まさに、彼らの第2章がここからはじまる。
1stアルバム『D.A.N.』をリリース後、破竹の勢いでその名前を広めたD.A.N.。ついにここに2ndアルバム『Sonatine』(もともとは小規模のソナタを指す、イタリア語語源の音楽用語)が届いた。メランコリックなメロディ、インディR&B~クラウトロックにまたがるグルーヴ、そしてポストロック、テクノやダブの音響感覚が結びつきながらも、“ロック”としてのダイナミズムも残し、この国のインディ・シーンの奇跡的に特異点となった2016年の1st album『D.A.N.』。そして、ハウス、アフロビート~トロピカル・リズムへの探求と、彼らのポップスとしての意志とともに絶妙なバランス感覚でダンス・ロックを作り上げたミニ・アルバム『Tempest』。さらには、OGRE YOU ASSHOLEとの2マン・ツアーやフジロック・フェスをはじめとする様々なフェス、さらにはUKでのライヴ、そしてなによりもワンマンツアーと、回を重ねるたびにバンドとしての底力を確かな形で身につけ、そしてそのスケール感を拡大させていった数々のライヴ。
ここには、こうした月日をひとつの土台に新たな航路を目指して旅立つような、3人による新たな9つの作品が並んでいる。市川仁也(Ba)と川上輝(Dr)による新たなリズムへの探求、そして櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)の表現力をさらに豊かにしたファルセット・ヴォーカルとリリックが新たなヴィジョンを描いていく。
トリップの入り口となるようなイントロ「Start」、きらめくシンセのトーン、そして畳み掛ける後半のコズミックなトランス感がキラーな先行シングル「Chance」で本アルバムは幕開けとなる。アーサー・ラッセルのロウなエクスペリメンタル・ディスコを想起させるグルーヴィーな「Sundance」は、陶酔するディープ・ハウスの所作をものにしてみせたことをクールに示す。ベース・ミュージック~IDMのグルーヴや音色を彼らなりに昇華してみせたインスト「Cyberphunk」、そして続くはミュージック・コンクレートなインターバル「Debris」とアルバムは進んで行く。こうした楽曲たちはバンドとして彼らが新たな表現を見につけたことを端的に物語るサウンドだ。そしてアルバム後半、「Pendulum」は、ミニマルなフレーズに絡め取られる、その歌詞は前作の「Curtain」を想起させるSF的なモチーフが巡るコズミック・ブルース。先行シングルとして「Chance」とともにリリースされたアンビエントR&B「Replica」。コズミックなステッパーでグルーヴィーに進むリズム隊、そしてドラマチックに展開していくヴォーカルとシンセがフィールドを駆け巡る「Borderland」。その高揚感は、本アルバム後半のクライマックスのひとつと言えるだろう。まさに彼らの真骨頂とも言えるメロウ&チルアウト、そして美しくもメランコリックな情景を描くリリック、R&Bトラック「Orange」で本アルバムは閉じる。
ある意味で3人のバンドとしての表現力をストレートに拡大させたサウンドを効かせている。またひとつスケール感、そして次なる次元へと踏み込んだD.A.N.の新作。その先の道も、そこに死角はなさそうだ。
(Text by 河村祐介)